[3/3] Making of CARTOROMANCY

(文:藤谷千明)


モニターに「私たちの知っているMana様」がいるんです。


――制作には約1年かけたそうですね。メイク、撮影、アートディレクションなど様々な作業があると思うのですが、どのような工程で作られていくのでしょうか?


T.Nishibayashi:キャスティングの段階で、カードの世界観やコンセプトは3人の間で、ある程度共有はしているのですが、実現にあたってイメージを突き詰めるために、改めてアイデア出しの会議を行いました。その後、私がコンセプトや世界観を固め、タロットカードのラフ画=いわば設計図となるものを作ります。


――なるほど。


T.Nishibayashi:それをもとにヘアメイクをMichele Berryさんに相談したり、衣装のイメージを2人に、場合によってはスタイリストのRionさんに相談して、より表現を具体的に固めていきます。最終的にアーティストさん側にクリエイティブの方向性を確認していただくことも大事ですね。コンセプトをびっしり描いたラフ画を事前にアーティストさん側にも目を通していただき、イメージを共有してもらうことで、役に入り込んでいただくことができたと思います。


――入念な準備をして、撮影に挑むのですね。


 T.Nishibayashi:そうですね。撮影当日は、事前に作ったラフ画をもとに撮影をしますが、現場判断で結構内容を変えることも多くあります。それはポージングだったり、小道具を足りたり、減らしたり……、思いもよらないアイデアが浮かぶこともあったり、撮影はライヴのようなものだと考えています。


Michele Berry:メイクも「(現場で)ここに何かを足した方がもっと良くなるね」と、臨機応変に変えたりすることがありました。


 ――すべての作品がクリエイティヴで、それゆえの苦労があったとは思うのですが、その中でも印象的だった撮影現場のエピソードはありますか?


Michele Berry:「1 THE MAGICIAN」のMana様の出演が決まったときは、喜びはもちろんですが、驚きも大きかったです。


T.Nishibayashi:まさかオファーを快諾いただけるとは、夢にも思っていませんでした。


Michele Berry:なんといっても、3人の憧れの存在でしたので……。


T.Nishibayashi:衣装もMoi-même-Moitiéさんに協力していただけたことも、すごく嬉しかったです。


Michele Berry:これは話が前後するのですが、普段から一緒に仕事をしているJILUKAのSenaさんがMoi-même-Moitiéさんのモデルをすることになり、それをきっかけにしてMoi-même-Moitiéさんにオファーすることができたんです。


Lestat C&M Project:私は中学生の頃からずっとMoi-même-Moitiéが好きだったので、衣装を選ぶ段階から、本当に楽しくて仕方がなかったです。


――今の皆さんのお話ぶりから、本当にリスペクトと嬉しさが伝わってきます。


Lestat C&M Project:撮影中も、スタッフ全員の感嘆の声が漏れていました。とにかく美しかったですね……。


Michele Berry:写真を撮ると、モニターに「私たちの知っているMana様」がいるんです。とても感慨深かったですね。


――撮影した写真をチェックするために、パソコンにつないでモニターに表示させた時点で、もう「Mana様」なんですね。他に印象に残っている撮影はありますか?


T.Nishibayashi:どの作品も思い入れが強いので、選びきれないのですが……、工程が異なる、という点でエピソードを1つ紹介すると「13 DEATH」のカードの制作の裏側ですね。眞呼様にオファーをさせていただいたのですが、ご本人から「(カードの表現について)こういったアイデアがあるのですが」と眞呼様からカードのアイデアを提案してもらったんです。


Michele Berry:すごく熱心で真摯な方でした。


T.Nishibayashi:眞呼様のアイデアと私たちのアイデアを融合させた作品となりました。そこに在るのは「眞呼様」であり、「13 DEATH」であり、唯一無二の表現ができたかと思います。


Lestat C&M Project:撮影のときも、一瞬で空気が変わりました。


Michele Berry:あの様なことを「アーティスト力」って呼ぶのでしょうね。


Lestat C&M Project:ほぼ同じスタジオで撮影していたんですけど、本当にアーティストさんによって空気が違うんです。ベテランの方がバチッと一瞬でスイッチ切り替えてくださることもあれば、若手の方が「こうした方が良いですか?」「なんでも言ってください!」みたいに、すごく頑張ってくださることもあって。 




撮影過程でアートワークが大胆に変わることも


――様々なスタイルの方がいらっしゃると。普段知ることのできないお話なので、とても興味深いです。T.Nishibayashiさんは先程「ラフと当日の撮影で変わることもある」とおっしゃっていましたが、大きく変わった作品はありますか?


Lestat C&M Project:みくさんの「19 THE SUN」のカードです。ラフの段階ではもう少しおとなしい印象のイメージだったけれど、紆余曲折を経て最終的に頭に人形を乗せてしまいました。


Michele Berry:これはさすがにラフの段階では出てこない発想ですね。


――ちなみに、どういった話の流れで「頭に乗せよう」となったのですか?


Lestat C&M Project:最初は人形を抱える構図だったんですけど、「頭に乗せてみない?」という話になったんですよね。


Michele Berry:初期のアンティック-珈琲店-さんのイメージって、毒々しさがあったというかみくさんもぶっ飛んだ世界観を個人的に感じていたんです。それもあって、ふと「人形を頭に乗せる」というイメージが降りてきたんです。


Lestat C&M Project:それで「乗せていいですか……?」と。


――みくさんにお伺いをたてたと。


Lestat C&M Project:少し驚いていらしたけど、快諾いただけました(笑)。狂気的な感じになりましたね。


――衣装の変化によって、アートディレクター・デザイナーであるT.Nishibayashiさんが担当する合成やCGなどの加工にも影響はあるのでしょうか。


T.Nishibayashi:それはありますね。


Michele Berry:この背景のひまわりは、元のラフ段階だと、すべての花が咲き誇っていたんですけど、写真自体が狂気的な雰囲気に仕上がったので、元気なひまわりだけじゃ少し違和感があるなと、T.Nishibayashiさんに「もしかしたら後ろのひまわりは枯れていた方がいいかもしれない」と提案したら「いいですね!」と。


T.Nishibayashi:私たちの解釈で考える「19 THE SUN」は、良い意味もあれば悪い意味もあるカードなんです。裏の顔だったり、明るみに出てはいけないものが表に出ていたり、そういう部分を少し匂わせる表現として、人形が焦げているような描写も入れている。じゃあそれに合わせて後ろのひまわりたちも、少ししなっとしていたほうが、カードの意味的にもあっていると思って、今の形に仕上がりました。 




「ヴィジュアル系」への誇りと愛を持って


――正式な発表前の段階でのSNS上での反響も大きかったですね。ファンの方も楽しみにされているのでは。


Michele Berry:そうですね。SNSアカウントを作った段階では「実写タロットカードプロジェクト」であることだけを知らせる映像を流していたので、ファンの方のほうから「これってカードになるのかな?」なんて、予想をしてくださっていたり。


Lestat C&M Project:「何になるの?」「え、ライブかな?」なんて盛り上がってくれましたよね。


T.Nishibayashi:予想以上に皆様が盛り上がっていただいている様子を見て、私たちも大変嬉しかったです。


Lestat C&M Project:自分の好きなアーティストのタロットカードの意味をすぐに調べてくれて、感想をつぶやいてくれたのも本当に嬉しかったですね。みなさんがタロットに興味を持ってくださっているコメントを見るのも楽しいです。


――SNS上では、外国語のコメントも目立ちます。世界中の人たちに届くとよいですね。


Lestat C&M Project:ありがたいことです。翻訳したコメントを読んでいると、どこの国でも美しいものが好きなことは変わらないのだと思います。


Michele Berry:とくに耽美系は世界中にファンがいる印象があります。ワールドワイドにいきたいですよね。


T.Nishibayashi:ヴィジュアル系って日本独自の文化だと思うんです。


Lestat C&M Project:世界中に広めたいですね。いや、その前に日本国内でも、もっと注目されていいはず。今の時代、いろんなエンタメが溢れていますし、例えば2次元のキャラクターは確かに美しいけれど、「もっとこっちも見て! こんなに綺麗で、しかも素敵な音楽を作っている人たちがいるんだよ」という思いを抱いています。


――同意です。ヴィジュアル系が好きだからこそ、もっと盛り上がってほしいという気持ち、シーンに対する愛情や誇りは、アーティストもクリエイターもファンも共通しているのかもしれないですね。


Michele Berry:全員その様な気持ちを持ってやっていますね。


T.Nishibayashi:誇りと愛を持ってヴィジュアル系に関わっています。


Lestat C&M Project:本当、私たちもね、ヴィジュアル系が本当に大好きでやってるんですよ。これが遺作でも良いってくらいに命をかけています(笑)。 


 ――そんな「破滅の美学」みたいに言わないでください(笑)。 


 一同:(笑)。 


(終)



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